要介護認定調査票は、市区町村の認定調査員が利用者宅を訪問して74項目の心身状態を確認し、記録する公式書類です。この調査結果は一次判定(コンピュータ判定)の基礎データとなり、介護認定審査会での二次判定にも影響します。ケアマネジャーにとっても、認定調査の内容を理解しておくことは、アセスメントやケアプラン作成の精度を高める上で重要です。全国には191,892件を超える介護サービス事業所があり、利用者は認定結果に基づいてサービスを利用します。認定調査の正確性は、適正な介護保険運用の出発点です。
本記事では、要介護認定調査票の構造・74項目のチェックポイント・特記事項の書き方を認定調査員およびケアマネ向けに解説します。
要介護認定調査票とは
要介護認定調査票は、介護保険法第27条に基づき、市区町村が要介護認定の判定資料として作成する書類です。
認定調査の流れ
- 利用者または家族が市区町村に要介護認定を申請
- 市区町村が認定調査員を派遣
- 認定調査員が利用者宅を訪問し74項目を確認
- 調査票と主治医意見書を基に一次判定(コンピュータ判定)
- 介護認定審査会で二次判定
- 市区町村が要介護度を決定・通知
調査員の資格
認定調査は、市区町村職員または市区町村から委託を受けた居宅介護支援事業所のケアマネジャーが実施します。新規申請は原則として市区町村職員が実施し、更新申請は居宅介護支援事業所への委託が可能です。
認定調査票の構成
認定調査票は概況調査、基本調査(74項目)、特記事項の3部で構成されます。
概況調査
- 調査実施日・場所
- 本人・家族の状況
- サービスの利用状況
- 住環境
基本調査(74項目)
基本調査は以下の7群に分類されます。
- 身体機能・起居動作(13項目)
- 生活機能(12項目)
- 認知機能(9項目)
- 精神・行動障害(15項目)
- 社会生活への適応(6項目)
- 特別な医療(12項目)
- 日常生活自立度(2項目)
特記事項
基本調査の選択肢だけでは伝えきれない情報を、自由記述で補足する欄です。審査会の判定に大きく影響するため、丁寧に記載する必要があります。
第1群:身体機能・起居動作(13項目)
項目例
- 麻痺等の有無(左上肢、右上肢、左下肢、右下肢、その他)
- 拘縮の有無(肩関節、肘関節、股関節、膝関節、足関節、その他)
- 寝返り
- 起き上がり
- 座位保持
- 両足での立位保持
- 歩行
- 立ち上がり
- 片足での立位
- 洗身
- つめ切り
- 視力
- 聴力
チェックポイント
「できる・できない」の二者択一ではなく、「できる」「見守り等」「一部介助」「全介助」など段階的に評価します。調査時点の一瞬の状態だけでなく、日常的な状態を聞き取ります。
寝返り・起き上がりなどの動作は、実際にやってもらって確認するのが原則です。ただし利用者の負担にならない範囲で行います。
第2群:生活機能(12項目)
項目例
- 移乗
- 移動
- えん下
- 食事摂取
- 排尿
- 排便
- 口腔清潔
- 洗顔
- 整髪
- 上衣の着脱
- ズボン等の着脱
- 外出頻度
チェックポイント
移乗・移動は、介助の有無だけでなく、介助の方法(手を引く、体を支える、抱えるなど)を特記事項に記載します。
排泄は最もプライバシーに配慮が必要な項目です。利用者が答えにくい場合は、家族からの情報も参考にします。失禁の頻度、おむつの使用、夜間の状況を確認します。
第3群:認知機能(9項目)
項目例
- 意思の伝達
- 毎日の日課を理解
- 生年月日や年齢を言う
- 短期記憶
- 自分の名前を言う
- 今の季節を理解する
- 場所の理解
- 徘徊
- 外出すると戻れない
チェックポイント
短期記憶は「3つの言葉を覚えてもらい、少し後で聞く」という方法で確認します。季節や場所の理解は、直接質問して答えられるかを見ます。
徘徊・外出時の迷子は、家族への聞き取りが中心です。頻度、時間帯、距離、対応の難しさを特記事項に記載します。
第4群:精神・行動障害(15項目)
項目例
- 被害的
- 作話
- 感情が不安定
- 昼夜逆転
- 同じ話をする
- 大声を出す
- 介護に抵抗
- 落ち着きなし
- 一人で出たがる
- 収集癖
- 物や衣類を壊す
- ひどい物忘れ
- 独り言・独り笑い
- 自分勝手に行動する
- 話がまとまらない
チェックポイント
この項目は「ある・ない」の判定ですが、「過去1か月の頻度」を基準にします。月1回以上発生していれば「ある」と判定します。
家族の負担や対応の困難さは特記事項に詳しく書きます。「被害的」と「作話」はよく混同されますが、被害的は「盗まれた」「悪口を言われている」などの訴え、作話は事実と異なる話を作ることです。
第5群:社会生活への適応(6項目)
項目例
- 薬の内服
- 金銭の管理
- 日常の意思決定
- 集団への不適応
- 買い物
- 簡単な調理
チェックポイント
薬の内服は、現在の状態を評価します。服薬管理を家族が代行している場合、本人は「一部介助」または「全介助」と判定されます。
金銭管理・買い物・調理は、過去にできていたかではなく「現在できるか」を評価します。IADLの低下は生活機能の低下を示す重要なサインです。
第6群:特別な医療(12項目)
項目例
- 点滴の管理
- 中心静脈栄養
- 透析
- ストーマの処置
- 酸素療法
- レスピレーター
- 気管切開の処置
- 疼痛の看護
- 経管栄養
- モニター測定
- じょくそうの処置
- カテーテル
チェックポイント
過去14日間に受けた医療行為を対象とします。医療行為の実施者(医療職か家族か本人か)は問いません。
医療行為の内容は、主治医意見書と整合性を取る必要があります。調査時に確認できない場合は、後日主治医に照会することもあります。
第7群:日常生活自立度(2項目)
- 障害高齢者の日常生活自立度:自立、J1、J2、A1、A2、B1、B2、C1、C2
- 認知症高齢者の日常生活自立度:自立、I、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IV、M
これらは総合評価の指標で、第1群〜第6群の調査結果と整合性を取ります。
特記事項の書き方
特記事項は、基本調査の選択肢では伝えきれない情報を補足する重要な欄です。審査会委員は特記事項を読んで判定を行うため、情報の粒度が判定結果に直結します。
書き方のポイント
具体的な場面を描写する
「立ち上がりに時間がかかる」ではなく、「椅子から立ち上がる際、両手で肘掛けを押さえ、数秒かけて立位になる。1日5回程度の立ち上がりのうち、3回はふらついて家族が支えている」のように具体的に書きます。
頻度と程度を数値化する
「時々」「たまに」ではなく、「週2回」「1日3回」など数値で示します。
介助の具体的内容
「一部介助」とだけ書くのではなく、「食事の準備は家族がするが、箸やスプーンを使って自分で口に運ぶことはできる」のように介助の内容を明示します。
選択肢との乖離
基本調査で「できる」と選択したが、実際には不安定な場面がある場合、その乖離を特記事項で補足します。
特記事項の記入例
第1群 歩行について:
室内では手すりや家具につかまりながら歩行可能。外出時は家族の腕につかまらないと歩けない。約10メートルで休憩が必要。過去3か月で転倒2回(軽度打撲のみ)。屋外歩行は週2回程度で、主に通院時。
第3群 短期記憶について:
調査時の「3つの言葉を覚える」テストでは、直後は3つとも答えられたが、5分後には1つしか思い出せなかった。家族から「朝食の内容を夕方には忘れている」「同じ話を1日に何度もする」との情報あり。
第4群 介護に抵抗について:
入浴の声かけに対し、週3回程度「行きたくない」と拒否。家族が粘り強く誘うと最終的には入浴するが、所要時間が通常の倍かかる。暴言はないが、険しい表情になることが多い。
認定調査員が注意すべきポイント
普段の状態を聞き取る
調査時の一瞬の状態だけでは実態を把握できません。本人・家族に「普段はどうですか」と繰り返し確認し、平均的な状態を評価します。
本人のプライド配慮
高齢者は「できない」と答えることに抵抗があります。「最近は調子が良いですか」のように柔らかい切り出しで聞きます。できない場面を家族が話すと本人が傷つくこともあるため、場合によっては家族から別室で話を聞きます。
家族の客観性チェック
家族の説明が過度に悲観的または楽観的なこともあります。家族の介護負担を軽減したい思いから「できない」と誇張したり、逆に「迷惑をかけたくない」から「できる」と答えたりするケースです。調査員は中立の立場で事実を確認します。
調査時間の目安
1件あたりの調査時間は60〜90分が目安です。短すぎると情報が不足し、長すぎると利用者の疲労になります。
ケアマネにとっての活用
認定調査票は、ケアマネがアセスメントを行う際の基礎資料としても重要です。市区町村に開示請求すれば、過去の調査票を入手できます。アセスメント時に以下の点で活用します。
- 要介護度判定の根拠を理解する
- 変化の把握(前回調査との比較)
- 主治医意見書との整合性確認
- 特記事項から利用者の生活実態を把握
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出典・参考
- 厚生労働省「要介護認定 認定調査員テキスト2009改訂版」
- 介護保険法第27条
- 厚生労働省「要介護認定における認定調査員テキスト」