「うちの親には特養がいいの? それとも老健?」——これは介護施設選びで最もよくある疑問です。名前も似ていて、どちらも公的な介護施設。違いがわかりにくいのは当然です。
ひと言で整理すると、特養は「暮らす場所」、老健は「自宅に帰るための準備をする場所」です。終のすみかとして長く入所するのが特養、リハビリで身体機能を回復させて自宅に戻ることを目指すのが老健——目的がまったく異なります。
この記事では、介護施設ナビが保有する全国19万件の施設データから、特養と老健の実態を数字で比較します。
特養と老健の比較表
| 項目 | 特養(特別養護老人ホーム) | 老健(介護老人保健施設) |
|---|---|---|
| 目的 | 日常生活の介護(終身利用可) | 在宅復帰に向けたリハビリ |
| 入所条件 | 原則 要介護3以上 | 要介護1以上 |
| 入所期間 | 制限なし(終身) | 原則3〜6ヶ月 |
| 月額費用の目安 | 6万〜15万円 | 8万〜17万円 |
| 入居一時金 | なし | なし |
| リハビリ | 限定的 | 専門職が常駐(理学療法士等) |
| 医師の常駐 | 非常勤が多い | 常勤が義務 |
| 運営主体 | 社会福祉法人・自治体 | 医療法人が多い |
| 全国の施設数 | 11,064件 | 4,116件 |
| 平均定員 | 62名 | 89名 |
出典: 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」オープンデータ(2025年12月末時点)のデータを介護施設ナビが集計
特養の実態 — 全国11,064施設
特養は、常時介護が必要で自宅での生活が難しい方が、食事・入浴・排泄などの介助を受けながら長期で暮らす施設です。公的施設なので有料老人ホームに比べて費用が低く、入居一時金もかかりません。
入所できるのは原則として要介護3以上。認知症やひとり暮らしなど、やむを得ない事情があれば要介護1〜2でも特例で入所が認められるケースがあります。
介護施設ナビのデータでは、全国の特養は8,525施設。これに定員29名以下の地域密着型特養2,539施設があります。平均定員は62名で、地域密着型を含むため比較的小規模な施設が多い傾向です。
都道府県別の施設数TOP5
東京都が625施設で最多。次いで大阪府581、千葉県552、埼玉県507、北海道500と続きます。首都圏に集中しているものの、需要に対して施設数が足りず、入所待ちが数ヶ月〜数年になる地域も少なくありません。
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老健の実態 — 全国4,116施設
老健は、病院を退院したあと、すぐに自宅での生活に戻るのが難しい方が利用する施設です。理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションを受けながら、身体機能の回復を目指します。いわば「病院と自宅の中間地点」です。
入所条件は要介護1以上。特養より間口が広く、比較的入りやすいのが特徴です。ただし入所期間には目安があり、原則3〜6ヶ月で在宅復帰や次の施設への移行を検討します。「ずっと住み続ける場所」ではない点が、特養との大きな違いです。
全国の老健は4,116施設。平均定員は89名で、特養(62名)より大きな規模の施設が多くなっています。医師の常勤配置が義務づけられているため、医療法人が運営するケースが中心です。
都道府県別の施設数TOP5
大阪府が218施設でトップ。神奈川県196、東京都193、愛知県189、北海道180と、大都市圏が上位を占めます。特養と比べると施設数は3分の1程度ですが、入所期間が短いぶん、回転があるため比較的入所しやすい傾向です。
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費用はどのくらい違う?
特養と老健はどちらも介護保険が適用される公的施設です。月額費用の構成は似ていますが、中身に差があります。
特養の月額費用(目安)
介護サービス費+居住費+食費+日常生活費をあわせて、月額6万〜15万円が目安です。要介護度や居室タイプ(多床室・ユニット型個室)で変わります。ユニット型個室は居住費が高くなるため、月額13万〜15万円になることも。所得に応じた負担軽減制度(特定入所者介護サービス費)を使えば、さらに抑えられます。
老健の月額費用(目安)
同じく介護保険適用で、月額8万〜17万円が目安。特養と比べてやや高くなる理由は、リハビリの提供体制や医師の常勤配置など、医療面のコストが上乗せされるためです。ただし入所期間が3〜6ヶ月と短いため、トータルの負担は特養の長期入所より抑えられるケースもあります。
どちらも入居一時金は不要です。有料老人ホームで数百万円の一時金が必要になることと比べると、費用面でのハードルは低いといえます。
うちの親にはどっちが合う? — 判断のポイント
「特養か老健か」を判断するとき、最も大事なのは「自宅に戻る見込みがあるかどうか」です。
特養を選ぶべきケース
要介護3以上で、自宅での介護が限界を迎えている。認知症が進行しており、24時間の見守りが必要。家族が遠方に住んでいて、日常的な介護ができない。——こうした状況では、終身で入所できる特養が適しています。入所待ちが長くなることも多いため、早めに申し込みだけでもしておくのが現実的な対応策です。
老健を選ぶべきケース
骨折や脳卒中で入院し、退院後すぐに自宅での生活が難しい。リハビリを受けて身体機能を回復させれば、自宅に戻れる見込みがある。——こうした方には老健が向いています。「病院は退院しないといけないけど、自宅はまだ不安」という状況をつなぐ役割です。
迷ったらケアマネジャーに相談を
ご家族だけで判断するのは難しいものです。担当のケアマネジャーに相談すれば、親御さんの介護度や医療の状況、家族の介護力をふまえたアドバイスがもらえます。まだケアマネが決まっていない場合は、お住まいの地域包括支援センターに連絡してみてください。
まとめ — まずは地域の施設を調べてみる
特養は「暮らし続ける場所」、老健は「自宅に帰るための場所」。目的が違うので、どちらが上とか下という話ではありません。親御さんの状態と、ご家族の生活状況を照らし合わせて選ぶことが大切です。
介護施設ナビでは、厚生労働省のオープンデータをもとに全国19万件以上の介護施設を掲載しています。お住まいの地域にどんな施設があるか、まず検索してみてください。