介護保険サービスを利用するには、市区町村に要介護認定を申請し、「要支援」または「要介護」の認定を受ける必要があります。認定結果によって利用できるサービスの種類と量が決まるため、正確な認定を受けることが適切な介護の出発点です。
本記事では、要介護認定の申請方法・審査の流れ・認定区分の意味・不服申立ての方法まで、全手順を解説します。
要介護認定とは
要介護認定は、介護保険法に基づき、申請者がどの程度の介護を必要としているかを公的に判定する手続きです。認定結果は「非該当(自立)」「要支援1・2」「要介護1〜5」の8段階に分かれます。
認定区分の概要
要支援1
日常生活はほぼ自立しているが、一部に支援が必要。介護予防サービスの対象。
要支援2
要支援1より支援の必要度が高いが、介護予防により改善が見込める状態。
要介護1
立ち上がり・歩行などに不安定さがあり、部分的な介助が必要。認知機能の低下がみられる場合も含む。
要介護2
立ち上がり・歩行が自力では困難で、日常生活動作にも介助が必要な場面が増える。
要介護3
立ち上がり・歩行が自力ではできず、日常生活全般に介助が必要。排泄・入浴に全面的な介助が必要な場合。特養入所の原則対象。
要介護4
日常生活能力の低下が著しく、介護なしでは日常生活が困難。食事にも介助が必要になってくる段階。
要介護5
日常生活全般にわたり全面的な介護が必要。意思の疎通が困難な場合も多い。
認定区分と利用できるサービス
- 要支援1・2:介護予防サービス、地域支援事業
- 要介護1〜5:居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービス
要支援と要介護では利用できるサービスの範囲が大きく異なります。特養入所は原則要介護3以上が条件です。
申請の方法
申請できる人
- 65歳以上の方(第1号被保険者):原因を問わず申請可能
- 40〜64歳の方(第2号被保険者):特定疾病(16種類)が原因の場合のみ申請可能
特定疾病には末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、後縦靱帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、変形性関節症などが含まれます。
申請先
住所地の市区町村の介護保険担当窓口に申請します。
申請に必要なもの
- 要介護・要支援認定申請書(窓口で入手、自治体のウェブサイトからダウンロード可能)
- 介護保険被保険者証(65歳以上の方に交付済み)
- 健康保険被保険者証(40〜64歳の場合)
- 主治医(かかりつけ医)の情報(医療機関名、医師名)
代行申請
本人が窓口に行けない場合は、以下の方が代行して申請できます。
- 家族
- 地域包括支援センター
- 居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)
- 介護保険施設
- 成年後見人
入院中の場合は、病院のMSW(医療ソーシャルワーカー)に相談すると、申請手続きのサポートを受けられます。
認定調査
申請後、市区町村から認定調査員が派遣され、申請者の自宅(または入院先)を訪問して心身の状態を確認します。
調査の内容
調査は74項目にわたり、以下の7群で構成されます。
- 身体機能・起居動作(13項目):麻痺、拘縮、寝返り、起き上がり、歩行、視力、聴力など
- 生活機能(12項目):移乗、移動、食事摂取、排泄、着脱、外出頻度など
- 認知機能(9項目):意思伝達、短期記憶、見当識、徘徊など
- 精神・行動障害(15項目):被害的、作話、昼夜逆転、介護への抵抗など
- 社会生活への適応(6項目):服薬、金銭管理、買い物、調理など
- 特別な医療(12項目):点滴、透析、酸素療法、経管栄養など
- 日常生活自立度(2項目):障害・認知症それぞれの自立度
調査日の対応ポイント
家族は同席する
本人だけだと「できます」と見栄を張ることが多いです。家族が同席して普段の状態を補足説明します。
困っていることをメモしておく
日頃困っていること、介助が必要な場面を事前にメモしておくと、調査員に伝えやすくなります。
普段通りの状態を見せる
調査の日だけ気合を入れて身なりを整えたり、普段以上に動いてしまうケースがあります。調査は「普段の状態」を確認するものなので、ありのままを見せることが大切です。
特記事項への反映を依頼する
調査員に「夜間のトイレの回数」「服薬の飲み忘れの頻度」など、74項目の選択肢だけでは伝わらない情報を補足します。特記事項は審査会の判定に大きく影響します。
主治医意見書
認定調査と並行して、主治医が「主治医意見書」を作成します。市区町村から主治医に直接依頼されるため、申請者が何かする必要はありません。
主治医意見書の内容
- 傷病に関する意見(診断名、症状の安定性、治療内容)
- 特別な医療の必要性
- 心身の状態に関する意見(ADL、認知機能、精神・行動障害)
- 生活機能に関する意見
- サービス利用に関する意見
- 特記すべき事項
主治医がいない場合
かかりつけ医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察を受ける必要があります。申請前に1度は医療機関を受診しておくことをおすすめします。
一次判定と二次判定
一次判定(コンピュータ判定)
認定調査の結果をコンピュータに入力し、約3,500通りの組み合わせから「要介護認定等基準時間」を算出します。この基準時間を基に、暫定的な要介護度が判定されます。
二次判定(介護認定審査会)
一次判定の結果、認定調査の特記事項、主治医意見書を総合的に審査し、最終的な要介護度を決定します。
介護認定審査会は保健・医療・福祉の学識経験者(医師、歯科医師、薬剤師、看護師、社会福祉士、介護福祉士など)で構成され、市区町村ごとに設置されています。
審査会では、一次判定の結果を変更(上げる・下げる)することもあります。特記事項や主治医意見書に記載された情報が判断材料になります。
認定結果
結果の通知
申請から原則30日以内に、認定結果が郵送で届きます。ただし実際には30日を超えることもあります。
通知書には以下が記載されます。
- 認定区分(要支援1・2または要介護1〜5、もしくは非該当)
- 認定有効期間(初回は原則6か月、更新は原則12か月〜最大48か月)
- 区分支給限度基準額
認定の有効期間
認定には有効期間があり、期限が近づいたら更新申請が必要です。有効期間は以下の通りです。
- 新規認定:原則6か月(状態に応じて3〜12か月)
- 更新認定:原則12か月(状態に応じて3〜48か月)
更新申請は有効期間満了日の60日前から可能です。期限が切れるとサービスが利用できなくなるため、ケアマネジャーがリマインドしてくれるのが一般的です。
区分変更申請
認定期間中に状態が変化した場合(急に悪化した場合など)、区分変更の申請ができます。転倒による骨折、認知症の進行、退院後の状態変化などが区分変更の典型的な理由です。
認定結果に不服がある場合
不服申立て
認定結果に納得できない場合は、都道府県の「介護保険審査会」に不服申立て(審査請求)ができます。申立て期限は認定結果を知った日の翌日から3か月以内です。
ただし、不服申立ては審査に時間がかかる(数か月〜半年以上)ため、実務的には区分変更申請のほうが早く結果が出ます。
区分変更申請のほうが現実的
不服申立てよりも、区分変更申請を行うほうが一般的です。ケアマネジャーと相談し、前回の調査でうまく伝えられなかった情報を整理した上で申請します。
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出典
- 介護保険法第27条〜第35条
- 厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順」
- 厚生労働省「要介護認定 認定調査員テキスト2009改訂版」